※4年くらい後。佳主馬は地元で高校生です。また、都合により妹の名前を決めています。 健二は見たままにこまっていた。目の前にいる少年――否、もう青年か――とひざの上の少女――こちらは幼女と言っても差し支えないだろう――が真っ向からにらみあっていればだれだってこまるだろう。なにより健二はそのどちらも憎からず思っているので積極的に止めることもできないでいた。もっと言えば止めても無駄だと体験でもって知っている。なにせ一回や二回のにらみあいではない。 「栄里佳、いい加減にしな」 「いや!」 「いやじゃなくて。健二さんこまってるだろ」 「そんなのお兄ちゃんには関係ないもん。ねー、健二くん」 「えーと……」 反りかえりながら小首をかしげて同意を求められ、健二は頬をかいた。子ども特有のかわいらしいわがままというか、独占欲というか。子どもは常に自分だけのルールがある。栄里佳くらいの年ごろならばこれくらいお転婆でもいいと思うのだがお姫さまの実兄にはあまり好ましいものではないらしく。 「健二さん。栄里佳のこと甘やかさないで」 長い前髪を透かして冷めた目を向けてきた。妹のわがままにはほとほとこまっています。目が語っていた。 「ま、まあ佳主馬くんも落ち着いて、ね?」 「おれは十分落ち着いてるよ」 「うう……」 じと目で見られしまい、健二は言葉につまる。もともと佳主馬をおどろかせるために内緒で名古屋に来たのだが彼は明日模試をひかえていると言うし、これではモチベーションを下げてしまうだけだ。さてどうしよう。あぐらをかいたところにすっぽり収まってご機嫌な栄里佳に頭をむりくり撫でさせられながら(そう言えば真緒にも同じことさせられたなあと思い出しながら)すっかり拗ねてしまっている佳主馬の機嫌をどう取ろうかと健二はひとり作戦会議をはじめた(やっぱり頭を撫でてみるとか?)。
between KING and PRINCESS. |