かさり。冷ややかなものが頬をかすめて綱吉はまぶたを震わせた。まだ起きたくなくて寝返りを打とうとし(そもそも寝てたっけ)身体の上で転がる感触に今度こそ目を開ける。
「やあ、沢田」
 引っくりかえっていたのは黒のジャケットを羽織った男。それからむっとするような花のにおい。顔をずらしただけで無数の首が散っているのがわかった。
 なんとなく、意味はわかる。
 その間にも花は降ってくる。彼の腕に抱かれた花束は次々首が落ちていく。なにを思ってくびりとっているのか。
「――楽しい、ですか」
「全然」
 でしょうね、綱吉はため息を吐きたくなる。せめて花粉は取ってほしかった。
「アルマーニくらいでがたがた言うんじゃないよ」
「せっかくのプレゼントだったのに……」
 彼はにまりと笑った。


盲いたリリーがおちる
( いつまでも喪服を着慣れないきみが悪いんだよ。 )