ロックオン・ストラトスはアレルヤ/ハレルヤにとってはつこいのひとだ。はじめて恋したひと。はじめて恋しいと、そばにいてほしいと乞うたひと。刷りこみでも義務でもなくただ単純に呼吸するのと同じ自然さで恋をした。たぶんまだ愛には足りなくて、好意の域にくくるにはいささか乱暴で狂暴で不恰好だから。単純にとなりに在ってほしい願望。いつからそうだったのかを思い出すにはすぐそばに在ることがあまりに日常過ぎて、はつこいと気づいたのはひどいことにあのひとがいなくなってしまったからだ。あるいはいなくなってしまったからはつこいにをしたのか。いなくならないでほしい。不在を嘆いてすなわち存在を願ってようやく気がついた恋しいという気持ち。
 ロックオン・ストラトスはだからきっとアレルヤ/ハレルヤのだけでなくて刹那のティエリアのフェルトのみんなのはつこいのひとだ。はじめて恋したひと。はじめて恋しいと、そばにいてほしいと乞うたひと。単純にとなりに在ってほしい願望。いなくならないで。不在を嘆く、それはあのひとが恋しいから。愛には満たない、好意の域にくくるには強引で傲慢で原初的な。けれど伝える術はだれも知らなくて。なぜなら恋しい気持ちはつまり後悔と同じでふりかえらないことをみんなが無意識有意識で決めていたしなによりあのひとも教えてくれなかった(基本必要事項以外なにかを教えてくれたりはしなかった意外でもなくそういうひとだった)。もしかしてこうなることを見越していたのではとうたがうのはあのひとにとってすれば心外かもしれなくてでももはや反論の聞きようも弁解のしようもないそれこそ今さらだ。
 あのひとがよくいた展望スペースから朝を眺める。あれはどこの朝だろう。どこでもいいことだ。湾曲した地球の影からいつもびっくりするような速さで太陽がじりじりすがたを見せて(実際に動いているのは地球のほうだけれど)。あかるくなる宇宙がどうしたって憎たらしい。あのひとが墜としたかった一瞬でもそう考えていた節がおそらくあった惑星のくせにあの星はあんなにもあのひとの色をしているからまるで(なにかを)見せつけられているみたいでくやしい。くやしくて仕方がない。
 だからあのひとに恋しい気持ちを伝えるにはどうすれば正解だったかを考える。逆説の思考。だって今あのひとを恋しく思うのは今あのひとがいないからであってもしも今あのひとがいたのであればロックオン・ストラトスはアレルヤ/ハレルヤのはつこいのひとにはならなかったはずで。当たり前に愛にはならない、好意の域にくくるには心配と少しばかりの気がかりがあるくらいで無惨に霧散していたそんな確定予測がいまだに可能であるにもかかわらず。
「あなたは本当にひどいひとだ」
 だのに今あのひとはいなくていなくなってしまったからあなたはこの先生きていく未来でずっとはつこいのひとのままなのだ。



15次元コントロール領域


(はつこいってもっときれいなものだと思ってたけど)
(叶わないっていうのだけは本当なんだね、ハレルヤ)