唐突に目が覚めて歩きまわった不慣れな艦内で見つけたグリーンのモビルスーツに一瞬だけ呆けてしまって次にはもう笑いたくなった。あいつは死んだはずなのに。あいつのために誂えたようなそれのコックピットを埋めてしまうのはすなわちあいつはさして重要でなかったということの証明。メンタル面においては多大な打撃を与えてくれたが組織からすれば埋まる穴。スペックを多少落としても賄える欠落。今やあのモビルスーツを駆るマイスターを指す名はあいつのものでないのなら。だれがその名で呼んだあいつを覚えていてやれるのだろう。記憶はかならず風化する。不在の在という言葉もあるが物体はいるか、いないかのふたつにひとつ。呼ばれることのないあいつは消えるばかりだ。たとえ組織の人間があいつを覚えていても世界からすれば前と今でグリーンのガンダムに乗るパイロットは同一という認識だ。異なることに気づかない。表面上変わらない数がその実減って増えたことを知らないから。
「だからてめえはばかだっつーんだ」






世界があいつを忘れてく
それはあんたがここにいないから