死んだらわすれてほしいと伝えた。とくべつな意味はない。ただ、四機あるガンダムなかでいつもいちばんうしろにいるのが彼の機体だから、きっと彼が最後に最期になると思ったから。だって彼はやさしかったから。今から思えばかなしくなるくらいやさしくて、少しでもお願いすれば叶えようとしてくれた。だから言った。彼のひざにもたれて頭をあずけて目を閉じて。お願いした。死んだらわすれてほしい、と。それだけを。 そうしたら彼はいつものように少しこまった風にやわらかくわらって、 「おまえにもできるなら」 よくわからない手つきで頭を撫でた。めずらしく白いだけの大きな手はあたたかった。そのときはまだわからなかったけれどあの手がすきだった。本当に、本当にすきだった。あの手が欲しかった。あたたかな手がしなやなか腕が名前を呼ぶ声が安心をくれる背中が欲しかった。 なのに。もう彼が教えてくれて彼と見たものを見るたびにあやまりたくなる。泣きたくなる。ごめんなさい。ひどいお願いをしました。だからどうかわすれろなんて言わないで。だってほら、わすれたくないんだ。思い出したくない。ずっといっしょにいてほしいのに。あなたはきれいなだけになってしまう。きれいなものはつめたいから。 もう一度だけ抱きしめてほしいのに、どうしてかえってきてくれないの(それはきっと守れない約束のせいですか)。
やさしいものはとてもこわい |